【読書メモ】「家族の幸せ」の経済学 

こんばんは〜ฅ^•ﻌ•^ฅ

最近Twitterとか、書籍とかでおすすめされた本はすぐに読むようにしているのですが、なにをきっかけで読もうと思ったのかすぐに忘れちゃうんですよね。

今回紹介する本も確かどこかで引用されていて手に取ったのですが、きっかけを忘れてしまいました。

これから結婚・出産などのライフイベントを控えている方は、実感を持ってデータを見れると思うのでおすすめです!

読んだ本

概要

結婚、出産、子育ては人生の転機であるが、初めてのことを迎えるとき、経験者からたくさんの個人的なアドバイスが降り注ぐ。
「帝王切開は本当のお産ではない」「赤ちゃんにとって母乳が一番」「3歳までお母さんが面倒を見ないとダメ」など、もっともらしく言われることがあるが果たして本当に正しいのか?

本書では最新のデータをもとに、これらの通説が正しいのか検証し、また新たな事実を見つめて、どう行動に移せばいいのかのヒントを与えてくれる。

まとめ

結婚の経済学

結婚のメリット

  • 費用の節約
  • 分業の利益
    • 昔:男性は金を稼ぐ、女性は家事育児をする
    • 今:家事を得手不得手で分担する
  • リスクの分かち合い
  • 子供を持つこと
    • 以前よりコストが高い(機会費用含む)
    • 後継ぎにする、介護してもらうメリットはもはや現実的ではない

未婚率の上昇の原因

  • 分業の利益の低減
  • 子供を持つことのコスト増

赤ちゃんの経済学

母乳育児

  • 生後1年間の健康面に良い影響あり
  • 肥満、アレルギー、喘息には影響なし
  • 知能面では6歳時点で好ましい影響があるが、16歳時点で消失する

育休の経済学

  • 育休制度の柱
    • 雇用保障:育休を理由にクビにならない、復帰が保証されている。
    • 給付金:休業前の所得の一定割合が雇用保険から支給される。
  • 日本の育休制度は諸外国と比べても充実している。
    • 期間:アメリカは12週間、ヨーロッパの一部の国は3年間
    • 給付金:アメリカはゼロ、メキシコ・スペイン・ポーランドは100%

イクメンの経済学

  • 男性育休について、制度は充実しているが取得率が低い。
  • 日本での男性育休の割合は5%程度、北欧は70〜80%。
  • 近しい人が育休を取ると、取得率が上がる
    • 同僚、兄弟に経験者がいる場合:11〜15%上昇
    • 上司に経験者がいる場合:同僚同士の2.5倍

保育園の経済学

  • 「ペリー就学前プロジェクト」
    • 検証方法
      • 低所得の黒人家庭の3〜4歳の子供を対象とする。
      • 2つのグループに分け、1グループに質の高い幼児教育を提供する。
      • 40歳まで長期追跡し、各指標を評価する。
    • 結果
      • 5歳時点の知能、情緒面は幼児教育の提供を受けたグループで改善された。しかし8歳時点でその効果は消えた。
      • 40歳までの観察の結果、社会生活面で大きな効果あり。高卒率の向上、就業率の向上、所得の増加、生活保護受給率の低下、逮捕される回数の低下。
      • ※日本では保育園に比べて家庭教育が大きく劣るわけではないため、この実験結果がそのまま日本には当てはまるわけではないことに注意。
    • 成果と提言
      • 幼児教育の提供は社会的なコスト低減につながる。
      • 社会全体が恩恵を受けるため、社会全体がその費用を負担すべきだという意見には経済的合理性がある。
  • 日本での「21世紀出生児縦断調査」に基づく研究
    • 検証方法
      • 2001年、2010年に生まれた子供の出生から発達を追跡する。
      • 両親にアンケートに回答してもらう。
    • 結果
      • 子供の発達は母親の学歴によって大きく異なる。
      • 多動性、攻撃性について、4大卒の母親を持つ子の方が落ち着きがある。
      • しつけの質について、4大卒の母親の方が質が高い。
      • 上述の差異について、保育園で幼児教育を受けた場合、学歴の高い家庭と低い家庭の差が小さくなる。
      • ※学歴が低いことで、家庭環境が悪いことが即決まるわけではないことに注意。
    • 成果と提言
      • 保育園は「家族の幸せ」に貢献している可能性がある。
      • 広く保育料を無償化するより、学歴の低い家庭の子が保育園に通えるように保育所を増やす方が効果が高い。

感想

これから出産、子育てを迎える私にとって、興味深いデータがたくさん紹介されていた。

データが一部の人にとって不都合な結果を示す場合もある。
たとえば帝王切開では(まだ研究が完全でないとはいえ)健康上の問題が発生する可能性が示唆されているし、学歴が低いお母さんの家庭では子供の発達に悪い影響を与えている傾向がある。

しかし、だからといってその一部の人を非難・差別するのではなく、限りある資源をそれらのデメリットを克服するような政策に注ぎ込み、社会全体でフォローしていくことが重要だと筆者は述べている。

特に私がなるほどと思ったのは保育園の効果について。

上述のとおり、母親の学歴によって子供の発達に悪い影響を及ぼす傾向があるが、それは専門家による幼児教育の機会を提供することで克服できることをデータは示している。

保育園に預けることで、学歴の高い(四大卒以上)家庭の子はほぼ発達に改善が見られないが、学歴の低い(高卒未満)家庭の子は改善が見られる。

これまで、我が家は子育て関連の所得制限すべてにかかるので、福祉とはいえ同じ場所に通うのにこちらは月7万円も掛かるし、子供手当はないし、やってられないよ〜と思っていた。

しかし、我が家のような家庭は投資効果が薄いので、そこに対する手当をなくして、もっと支援されるべき(費用対効果が高い)家庭に財源を注ぎ込むという考え方は、社会全体というマクロ視点から見ると合理的なんだな、と納得できる面があった。

ただ、これはあくまで限られた子育て関連の予算をどう振り分けるかという問題に対して納得できたというだけで、他の政策を含めても子供関連の所得制限が適切なのかというと、個人的にはまだ不満があるけれど…。

政策決定においてこういったデータが活用されていると信じたいが、意思決定者には判断根拠をきちんと説明してほしいと感じた。

将来的に社会が負担するコストが低減する(犯罪件数が低下する、生活保護率が下がる)ことを示して、だから所得制限を設けてなるべく学歴の低い(≒所得の低い)家庭を優先すると説明してもらえれば、少なくとも今よりは国民にも納得感があると思う。

本書でも触れられている通り、日本での研究は完全ではないので、根拠と言えるほどのパワーがあるかは課題があるが、データをもとに合意形成していく、そのプロセスを透明化していくことは重要だと思った。